N様邸の新築現場は、大工の内部造作工事の真っ最中です。
左の写真は現場内部の全景です。
こうして見ると、相当な量の木材が使われていることが分かりますね。もちろん天然の無垢材です。
そこで、今日は木材の話をしたいと思います。
さっそくですが、昭和住宅では、家一棟につかう木材(構造材・羽柄材)のうち約85%が地元九州産(福岡県、熊本県、大分県産)の杉や桧です。そして、主に和室の化粧材に使う国内他地方産が2.4%、残りの約12%が輸入材となっています。
(当サイト中の、「昭和住宅の家づくり」のページでもご紹介しています。)
←左の図が、昭和住宅の平成19年度の実績値です。
このなかで約12%を占めている輸入材とは、いったい何だと思いますか?また、なぜ国産材100%ではないのでしょうか?
この輸入材の正体、じつは梁や桁に使うベイマツ(米松)材です。
ベイマツは北米西海岸地方に分布する針葉樹で、英名ではダグラスファー(Douglas fir)と呼ばれるマツ科トガサワラ属の木です。
材質はアカマツやクロマツに似た点が多く、針葉樹としては重硬で、平成12年建設省告示第1452号によると建築用の設計強度としてはアカマツ、クロマツなどと同じく針葉樹の木材の中で最も強度の大きいランクに位置づけられています。
つまり、大きな力を受ける梁や桁に適した木材ということです。
それでは、梁の部分を拡大してみましょう。
これがベイマツの梁です。
断面の大きな部材がずらりと並んでいます。
現場で見るとかなりの存在感です。
平家建でこれだけ大きな断面の梁を使っている工務店はそうそうないと自負しております。。
さらに拡大してみると、梁の下端に何か記号が印字してあります。
左からJASマーク。
これは日本農林規格に定める品質に適合した信頼性のある木材ということです。
そのとなりに何やら見なれない「E110以上」と「SD20」と書いてあります。
これらは木材の品質を表すとても重要な数字です。
まず、「SD20」とは、含水率が20%以下になるように乾燥された木材ということを表しています。(乾燥した木材を使うことの重要性については、また別の機会に書かせていただこうと思います。とても大切なことなのですが、長くなりますので。。。。)
今回、注目していただきたいのが、「E110以上」の部分です。この記号の意味を大まかに説明しますと、
"木材を強さによって等級区分するときのグレードを表すもの"ということです。
一般的に、この数字が大きいものほど高い耐力を持っています。
専門的に言いますと、この「E110」はヤング係数が100~120×10³kgf/cm²(9.8~11.8×10³N/mm²)の間にあり、樹種ごとにヤング係数と強度との相関関係から得られたデータをもとに、強度に応じてランク付けしたものということです。
では、梁や桁などに必要とされる曲げ強度について、一般的なスギ材とベイマツ材を比較したらどのようになるのか、下のグラフをご覧ください。このグラフは平成12年建設省告示第1452号をもとに作成しています。
(現状では、スギのE90やE110はほとんど供給されていませんので、スギの無等級材、E50、E70と比較します。)
E110ベイマツ材の曲げ基準強度は、いずれのスギ材よりも大きい値であることがわかります。
また、ヤング係数が大きい(Eのうしろの数字が大きい)部材ほど荷重を受けたときの「たわみ」(変形する量)が小さくなることから、同じ荷重を受けたときでもE110のベイマツのほうがE50やE70のスギよりもたわみが小さい(変形しにくい)ということです。
さらに、ベイマツは大径で長い材を得やすいという特徴があります。
梁は屋根や上階などの荷重を支えて大きな曲げの力を受けている部材です。
長大で強度が大きい材が必要とされるわけです。
私たちが、梁に品質が明示されたベイマツ材を採用している理由はここにあります。
投稿者:圓佛 明